第5章 レベルについて 1

  ここで述べることは一般世間ではオーソライズされておらず、あくまで私個人の見解ですので、前もって断っておきます。そのつもりで読んでください。


  一つの概念として進化・進歩・発達などで表現されているものについて考察いたします。もちろん、卓球が上達するということも含まれています。


  卓球の腕については、技能にレベルがあるということは、経験上だれでも認識できると思います。卓球だけでなく語学や勉強、習い事でも同じでことです。


  ひとが新たな能力を獲得しようと努力しているとき、その能力の習熟は努力・練習量に比例して右肩上がりで、直線的に上達しません。一生懸命努力しても一向に上達しない。自分の技量に疑問が湧いてきて、自己嫌悪になることもあります。


  もう一方では大した努力もしないのに思いがけなく突然にうまくなることもあります。その時は嬉しくなって私は大したものだ、天才だとうぬぼれたりします。

 

これはどういう事なのでしょうか?


  いろいろな課題を練習して、あるレベルから次のさらに高度なレベルに移行しようとする時、ご承知の通り一つの課題がうまくできても、それが即、身につかないのです。

 

  あるレベルから次の高度なレベルに移行できるにはいろいろな条件を必要とします。一つや二つの条件が獲得できたからと言って次のレベルには移行できないのです。


  あるレベルに達するためにはいくつかの条件がそろわなければそのレベルに入ることはできません。これを必要条件と言います。この必要条件が揃って初めてそのレベルの初期、初歩の段階に入ることができ、安定的にそのレベルで機能できるといえます。


  必要条件とはこの一つ一つが独立してばらばらに存在しているのでなく、一つ一つの条件は相互に依拠し、補完し合って、一つのレベルを形成しています。どれ一つが欠けてもそのレベルは機能しえないない関係と言えます。


  そして、この必要条件のどれ一つでも欠ければ元のレベルに戻ります。必要条件が揃っている間は何とかそのレベルに維持できるのです。


  見方を変えて言えば、次のレベルに到達しようと各項目を、課題をもって練習しますが、それが達成できたとしても、その項目が達成できただけ、言葉を替えれば必要条件の一つの条件が次のレベルの水準に達成しただけということです。


  全体から見れば、今のレベルの中で一つだけ突出しているだけなのです。一つのレベルの中では各条件がお互いに依拠しながら、有機的に関係があって、初めてそのレベルが維持されるのですから、一つだけ突出しても実際は十分に機能しないのです。


  レベルというのは、そのレベルを維持しようとする力、全体として安定しようとする力が働きます。安定しようとする力が働いている中で、突出しようとするものがあれば安定を乱すものとして、今のレベルに引き下ろそうとする力が働きます。


  出る杭は打たれる、打って効果がなければ「村八分」という排除の論理が働きます。排除しても自分たちのレベルを守ろうとしていることになります。(つづく)  

2017年05月19日