第4章 相手のこころに同化する事例

剣道について:
  私の近所に高校の剣道部の顧問の先生がおられます。その先生にこの話をして、どの様に受けをしているのか聞きました。その先生が曰く、攻撃しようとする側は, 相手の体勢のすきを読んで打ち込みにかかります。その時、受ける側は剣先がちょっとでも動いたとき、相手は何処に打ってくるかの意図を察し、防御の体勢をとり、打ってくる竹刀を払う、かわすなどの対処をしたうえで、反転攻撃に転じるというのです。
  こころは一瞬のうちにここまでを読み取って、からだにこれらの動きを指示するわけです。自分のこころでまず予測して(仮説をたてて)予測が当たれば良いが、もし外れたらもう一度予測し直さなければなりません。予測が当たった時点でからだに対処の指示が出せるのです。この経過をふめばもう間に合いません。間に合わないので感に頼って判断すれば、すなわち主観によって対処する故、精度が落ちます。
  やはり、一瞬のうちに相手のこころに同化して、相手の動きから相手のこころを読み込み、意図を読み込まねば間に合いません。自分のこころのフィルターを通して、相手を見ていたら到底間に合いません。


野球について:
   一流のピッチャーが投げるボールのスピードは最速で150㎞/時、通常でも130㎞/時とのことです。これだけのスピードで投げられたボールは、投手の手から離れた時点で球種を判断して、打ちに行ったら完全に振り遅れとなります。剣道の受けと同じです。


サッカー PK戦について
   サッカーのPK戦でも同じです。ゴールキーパーは相手が蹴るときに方向、スピード、回転を判断して取りに行けば、到底間に合いません。時々ボールの飛んでくる反対の方向に飛んでいます。読み違いの結果です。自分のこころで読んで対処すれば、確率の問題となり5割が精度となります。実際は10%~20%の確率でミスします。この一例でも自分のこころで読んで対処していないことが分かります。


卓球について
  鳥山さんが昨年水谷選手の動きを高速度カメラで解析したNHKのドキュメントで次のようなことを説明したと紹介してくれました。相手がラケットでピン球を打って、それを打ち返すのには0.2秒かかっている。水谷選手が目視してから、こころが打つこと指示して、からだが打つまでの時間が0.2秒かかるとのことです。

  ということは相手が打つ前に相手の意図をつかんで、スピード、方向、回転の球種を読み取り、しかもその球種からどのように反撃するかを決めて、こころがからだに指示を出しているのです。これは別の言葉で言えばためを作って待つということになります。
  こころは時間に制約されませんが、からだは時間に制約されます。この解析からどうしても相手が打つ前に、相手の意図をつかんで、球種を見切り、受けの体勢を取り、反撃の体勢、すなわちためを作って待っていなければならないということになります。きちんとためを作ることができれば、思い通りに反撃の体勢が作ることができるのです。
  これだけのことができなければ、当てに行く、合わせにいくという打法になります。当てに行けばコースもスピードも回転も制御できず、甘いボールしか返球できず、相手の反撃を喰らうことになるのです。(続く)

2017年04月18日